2011年5月4日水曜日

Visualizing Project Management 1章

最適な日本語が見つからないのは,
opportunity seekerですよね.
英語のサイトを見ると,用語として確立している感があります.

opportunity はプロマネの世界では,よくRiskと表裏一体ととして扱われるので,
その際は「チャンス」.

でもopportunity seekerが,「チャンス探索人」じゃぁね・・・・

どうしましょうか.

asylum-seekerは,亡命希望者.
attention seekerは,目立ちたがり屋.
autograph seekerは,サインを集める人.

つまり,あまりseekerにこだわって日本を当てないほうがよろしいみたい.

opportunity seekerは,要は「ビジネスチャンスがどこにあるか見ている人」ですよね.
事業家とか投資家かなぁ,,,,,.
ちょっとちがうかな.




第1章
プロジェクト要求は,なぜ重大な問題なのだろうか.

===(囲み)===
1980年代の中ごろから終盤までは,
携帯電話は,利用できる地理的範囲が限られており,一般には大都市に限定されていました.
衛星を使った携帯電話に対する市場の期待が高まり,Iridium Programが誕生しました.
ところが,12年という開発期間が終了するまでに,GSM*型携帯電話技術が成熟し,市場を席巻してしまいました.
ごく一部の潜在的なIridium 型携帯電話の利用者が,残っているに過ぎない状態でした.
複数の企業が共同出資をしたコンソーシアムは,50億ドルの負債を抱え,破産に追い込まれました.

現実路線の市場の声は,徐々に流れを変え,Iridium Programは市場で生き残ることができないというものに変わりました.
しかもこれは,Iridium用の衛星が配備される数年も前に,明らかにされました.
===(囲みここまで)======

===(嶋津恵子注)===
GSM*
2000年前後に開発された端末も電話番号もそのままで世界中で利用できる国際ローミング方式.
1970年代後半より、欧州を中心に進めてきた統一通信規約.

Iridium 話は
http://www.icr.co.jp/newsletter/topics/2001/t2001K004.html
が,わかりやすく,面白いです.
===(嶋津恵子注終わり)===

===(欄外注)===
「痛みを伴う教訓だった.エンジニアの見果てぬ夢だった.
有意義であったが,結局のところは事業計画に関する教訓を学んだものだった.
投資とリスクを最小にすることが必要なんだ.
事業の観点で考えるべきなんだ.
もはや,エンジニアリング一辺倒で考えるべきでないんだ.」
Roger Taur
Roger Taur博士は,初代のIridium開発チームメンバーです.
===(欄外注終わり)===

この章は,一貫性の維持について述べます.
これは,事業実施計画と,プロジェクト・スコープと,顧客の要望間の一貫性です.
後に続く章(群)では,この一貫性を維持するための独創的な方法を述べています.
また,プロジェクトを実施する中で訪れるビジネスチャンス(Opportunity)の活かし方も説明しています.

Iridium Corporationの場合,事業家(Opportunity Seeker)たちが,初期投資額の2%で資産を買い取りました.
2004年の終盤までに,新会社は,10万人の顧客を集め,限定した市場と大胆に縮小した資本で,成功に導きました.
(初期のIridium Corporationは,経営の維持のためには160万人の受信契約者が必要でした.)

プロジェクト活動とその中で実現されるソリューションは,多くのビジネスで生命線になっています.
建設会社に於いては,プロジェクトは主たるビジネスそのものです.
一般耐久消費材を製造している企業に於いては,プロジェクトは新製品開発の要です.

市場で生き残るのか,市場の先導役をこなすのかは,
プロジェクトが,世界競争で成功するかどうかにかかっているのです.

プロジェクトの成功は,市場が期待するものを,市場が期待するときに
実現するという結果をもたらします.

この結果は,予定されたとおりの予算で開発され利用されたものであり,
期待されたとおりの,信頼性と品質が実現されています.

------------------------------
節:
市場のダイナミズムは,即応性と俊敏性を求めています.

市場の変遷や変化は,授業の目標を突然変更せざるを得ないようなことまで余儀なくします.
プロジェクトが長期にわたるほど,特に,目標を見失うようなことに直面しがちです.
予算繰りやその時々に合わせて帳尻合わせする計画では,市場の変化や計画の遅れを,うまくととらえることはできません.

長期(延長)化したプロジェクトは,人件費と材料費がかさみ,
最終的に市場に担ぎ出された時には,価格相当の価値を損なっていることがある.

市場競争における危険因子には次のようなものがあります.つまり,これらを常に念頭に置いておかないとプロジェクトは失敗する可能性が高まります.

・市場の短期間化は,高リスク化を伴う.
・力のある競合こそ,市場を開拓する.
・価格競争は,利益を侵食する.
・振興技術はあとからあとからどんどんやってくる.



===(欄外注)===
力のある競合は,市場導入までの期間をより短縮化することを狙います.
つまり損益分岐点をぎりぎりまで極めるわけです.
===(欄外注終わり)===

インフレや一時的な景気の後退のサイクルのような状況は,
資金借入力を後退させますが,
投資家からの圧力は依然として変わらないし,
景気後退と関係無く,驚異的な技術革新や世界を巻きむ競争は発生してしまいます.



===(嶋津恵子注)===
英文はinflation/recessionです.
inflation/deflationになっていないことに疑問がでるかしれません.
日本語では,インフレとデフレが対語として出現することが多いですが,
英語のサイトを見ると,inflationと共起している語は,recessionです.
つまり,
世界の経済史に於いては,デフレサイクル(デフレスパイラル)というのは珍しい状態のようで,
比較的に長期に続くインフレのサイクルの中に,短い景気後退の時期があるということのようです.

いずれにしても,経済は専門ではないので,
手嶋先生に質問してみましょうか.

経済学部を卒業したかたいませんでしたっけ?.

・・・・・あっ,いた!見つけた!
今日子さんだっ!
===(嶋津恵子注終わり)===


このような多様性に富んだプロジェクト活動に対する大きな影響は,次の様な動きの高まりがあります.
・技術革新にともなる採用技術の変更
・法令順守,倫理感,公正性
・国際性
・インタネットを使ったモバイル性

唯一確かなことは,特にプロジェクト要求に関し不確かだということです.
The Agile Alliance は,ソフトウエア開発者に対する要求同士の対立をどう取り扱ったらいいかを検討する組織ですが,
要求変更の取り扱い方に関する指針とその実践集を発行しました.

その指針を引用すると次の様になりますが,要求が変更されることは,容認さざるを得ないということになります.

・要求は,交渉や,落としどころを探す取引として,すすめるものではありません.
そうではなくて,顧客と開発者が継続的な共同作業をおこなった結果です.
・要求の変更は歓迎しましょう.たとえ,開発の後期においてもです.
・アジャイルプロセスは,顧客の強みをより生かす方向づけにのみ使いましょう.

===(嶋津恵子注)===
ここで注意すべきことは,要求変更を歓迎するということです.
要求変更に従い,そのままシステムを変えることではありません.
===(嶋津恵子注終わり)===


これらの策は,小さいプロジェクトで適用してください.
小さい規模のプロジェクト以外で適用すると失敗につながる可能性があります.

これらの策を実際にどう実現するかは,7章と19章で述べています.

2 件のコメント:

  1. 嶋津先生
    渡辺です。昨日のゼミのまとめを拝読しました。お忙しい中をここまで整理していただき感謝です。。。ありがとうございました。
    opportunity seekerについては、先生と同じ意見です。私はここでは「イリジウムのビジネスチャンスに期待して出資した人たち」と解釈しました。訳としては、「このビジネスに期待して出資した事業家、投資家たち」というのはどうでしょうか。
    inflationとrecessionの件、私が経済学部出身ということは是非忘れてくださいませ・・・。ある意味、「時効」みたいなもんですし(!?)。なので、fresh from schoolの新屋君あたりにお願いしましょう~!

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  2. 「イリジウムのビジネスチャンスに期待して出資した人たち」というのはそのもズバリですね.
    それにしても,「専門」に”時効”があるとは知りませんでした.(>o<)

    若者達の意見はどうですか?.
    「専門」に”時効”があるかどうかじゃありませんよ.
    opportunity seekerですよ.

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